(Photo&Report:Heritage&Legends編集部)
この先もまだまだ楽しめる?! ドラッグでもZは最高の素材だ!
基本、’80年代までの生産モデルで、鉄フレーム+空冷エンジンの車両がエントリーできるのが、VSB(ビンテージ・スーパーバイク)クラスだ。その歴史は’09年にストリートを走るZを対象に開かれた『KVS』クラスを発端とするもので、現在はストリートカスタムでそのまま出られる『VSBストリート』と、その中から10秒7を切る速いライダー、頂点クラスのVSBアウトローへの出場を目標としたライダーのための『VSBプロストリート』、そして前述の改造はほぼ無制限となる『VSBアウトロー』という3クラスでの構成を採る。
スタート当初のKVS時代は、同じ’80年代車でも4バルブエンジン搭載車はチューニングで有利という考えから、実質Zに参加は限定されたが、チューニングへの理解も技術も進んだ今は、エントリー車両のバルブ数は関係ない。けれどZシリーズは人気具合、アフターマーケットでのパーツの豊富さもあり、むしろそんなZ以外のバイクでのエントリーが少ないのはいた仕方ないところだろう。
そうした背景のVSB、やはりギャラリーの注目を集めるのはトップカテゴリーとなるアウトローだが、今季はこの第3戦まではクラスフォー・神田佳治選手(Z1-R)とザッパー・阿部 崇選手(Z1000)、ふたりだけのマッチレース模様。他のエントラントは、マシントラブルだったりプライベートなご事情だったり参戦が叶わない状況のようで、派手なロー&ロングのZが決勝ラダーを埋めた昨年を思えば、少し寂しいシーズンともなっている。
ただし、神田(’23年VSBアウトロー・シリーズチャンピオン)vs阿部(’19年、’21年VSB PRO・シリーズチャンピオン[※])の戦いは見応え満点。車両的なアドバンテージがあり目前となった8秒台を狙う神田選手、NAエンジンを搭載し(それでも163ps!)すぐにストリートバイクに戻せる仕様にこだわり神田選手を追う阿部選手、それぞれの思いやこだわりを知れば、よりレースが楽しめるはずだ。[※VSBアウトローは’22年第3戦から新設。ポイントによるシリーズチャンピオン決定は’23年シーズンからのことだ。それまでのVSBクラス最高峰はVSB PROだった]
さて、そんなZでのドラッグレースには、新しいニュースもある。テイスト・オブ・ツクバのモンスタークラスに参戦するライダーに声がけし、TOTモンスター参加車だけのクラスを作る動きだ。JD-STERは8台の決勝ラダーが組めるならクラスを新設(スポットでも)に積極的だから、その実現に期待したい。なんとか今シーズンの第4戦に、という話も聞こえてくるから、興味があれば当HP内トピック欄をマメにチェックしてほしい。
VSB各クラスの決勝レースをチェック!
■VSB OUTLAW(VSBアウトロー)
OUTLAW=無法者の名の通り、まさに何でもアリ! の、VSB最高峰クラスがこの、VSBアウトロー。今シーズンは開幕戦から、手前・チームZAPPERの阿部 崇選手(Z1000)と奥・クラスフォーの神田佳治選手(Z1-R)の一騎打ち状態。この第3戦も制した神田選手が昨年最終戦から4連勝と連勝記録を更新中。第3戦の終了時点で、神田選手のシリーズポイントは264P、阿部選手は201P。このZ1-Rでの9秒切りを目標とする神田選手がこのまま逃げ切り、2年連続シリーズチャンピオンを獲るか、阿部選手が待った! をかけるのか、次戦も白熱の戦いは続く。
■VSB PRO STREET(VSBプロストリート)/VSB STREET(VSBストリート)
共にドラッグスリックの使用は禁止され、それぞれタイム上限(10秒700)があるのがVSBストリートで、タイム制限なしがVSBプロストリートだ。ストリートクラスの方がより街乗りのバイクで出やすく、プロストリートはよりステップアップを目指すライダー向けという、JD-STERによる両クラスの趣旨がある。プロストリートでは菅野正勝選手(Z1)が、ストリートは五十嵐数馬選手(Z1)が、それぞれ今季初優勝を決めた。
そして上写真は第3戦での、その他のVSBプロストリート/VSBストリートの2クラスへの参加車両群。JD-STERの目論見通り、VSBストリートは街乗りそのままで参加の感だ。10秒700で両クラスを区切るのは、過去データからこのタイムがストリート系カスタムZでの壁となるから。一方のプロストリートはストリートタイヤを履くも、スイングアームを伸ばす車両が多い。VSBクラスは現状、Zのワンメイクレースの様相だが、’80年代の他モデルでのチャレンジも期待したいところだ。
さて、気になるシリーズポイントに目を向けると、VSBプロストリートでは菅野選手と2位の#205・小岩井則洋選手がともに1勝ずつ(残りの1勝は第1戦に出場した稲垣 透選手)で、菅野選手が224P、小岩井選手は100P。VSBストリートでは現在ポイントリーダーの#227・菅野真司選手(第3戦は2位)が219P、ランキング2位の内田雅幸選手は218P(こちらもともに1勝ずつ)と1ポイント差。両クラスともまだシリーズチャンピオン争いはまだ混沌の中にある。
JD-STERは深く分け入るほどにレースが一層楽しめる!
ここからは第3戦でのVSBクラスのレース以外にも目を移そう。実は夏の大会開催はJD-STERドラッグレースの運営側、エントラント側の双方にとってちょっとした鬼門となっている。晴れれば30℃を軽く超え、湿度も高いこの時期は好タイムをマークするには厳しい時期。さらに開幕戦、第2戦までにマシントラブルに見舞われた車両の修復にまわるエントラントも少なくなく、自ずと参加台数は減ってしまう時期だ。一方で、秋口からエントリーがV字回復するのも、例年の現象となっている。
ただし、シリーズポイント争いを意識する、各クラスの上位陣はそうも言ってはいられない。その例のひとつを挙げれば最高峰プロオープンクラスの3年連続チャンピオン、HAYABUSAを駆る白田文博選手で、開幕戦でマシンが損傷、この第3戦もマシン修復が間に合わず、街乗り愛車のZ1-Rでそのプロオープンに出場したのだった。決勝トーナメントに出れば、最低限のポイントは加算されるというJD-STERのルールを鑑み、HAYABUSAの修復中もいくばくかのポイントでも積み上げ、修復完了したら一気に巻き返そうという作戦なのだろう。
一方、開幕から見事2連勝を果たした昨季シリーズ2位の田邊靖彦選手はといえば、この第3戦ではNOSコントロールシステムに原因不明の不具合が生じて、なんとクラス・ルーキーで同じZX-14Rを駆る(チームも同じレッドモーターだ)矢嶋晴也選手にその連勝記録を止められてしまった。
シリーズポイント的にはチャンピオン争いはまだ、田邊選手が第3戦終了時で273Pと圧倒的有利(ランキング2位に上がった矢嶋選手は208P)だが、3カ月後(10月14日)開催の第4戦ではこの勢力図がどうなるか? そんな不安定要素も観る側の興味を惹くポイントとなるだろう。
さて、話は戻り冒頭の“夏対策”だが、JD-STER事務局では1.開幕を4月に繰り上げてレーススパンを空ける、2.かつて仙台での開催時に好評を得たナイトレース(涼しい夜にレースを行う)を開く……など、早くも2025年シーズンに向けてのアイデアを熟考中だ。まだ決定事項は何もないが、エントラントの声も大いに参考にしたいという。
今シーズンもあっという間に残り2戦となった。果たしてこの先、どんなドラマが生まれるか? 各クラスでチャンピオンの栄冠は誰が奪取するのか? このページを読んでくださった皆様には、ぜひ現場で白熱のレースを体感してほしい。
VSB以外も毎回、猫の目のように勝者が変わる!
■PRO OPEN(プロオープン)
’21〜’23年シリーズチャンピオンだった白田文博選手のHAYABUSAが開幕戦のマシントラブルによりポイント争いから後退。逆に開幕2連勝で今季チャンプに名乗りを上げたのが、奥・青いZX-14Rの田邊康彦選手。ところがこの第3戦ではNOSシステムがうまく機能せず、決勝敗退の土が付く。一方の矢嶋選手は今季スイッチしたプロオープン・ルーキーだが安定したタイムは定評のライダー。その実績通り、見事に優勝をさらってみせた。第4戦以降は白田の復活、田邊の復調も予想されポイント争いはますます混沌とするはずだ。
■CRAZY8(クレイジー8)
オープントーナメントの予選、上位8台が進出して競うのがクレイジー8クラス(直接エントリーはできない)だ。この第3戦の決勝は、奥・石森秀樹と手前・横田千里両選手、ともにクラスフォーからのエントリーで車両はZX-14R同士という戦い。予選から8秒台を連発して絶好調の石森が、ここでも0.065秒というRT(リアクションタイム)と8秒812というET(区間タイム。クレイジー8の上限は8秒800だから上限ギリギリだ!)で圧勝してみせた。
■OPEN TOURNAMENT A(オープントーナメントA)/OPEN TOURNAMENT B(オープントーナメントB)
前出のクレイジー8を除き、上位から8台ずつのトーナメントを組む、オープントーナメントクラス。その最上位、Aブロックで優勝はZ1000Mk.Ⅱを駆る横田正彦選手。この日のベストETは決勝での9秒286と、8秒台目前の安定したタイム。気象、路面の条件が揃えばいずれ……の感。続くBブロックではJD-STER最速油冷ドラッグマシンを標榜するベテラン、木内登喜雄選手のGSF1200が、決勝中にベストET、10秒085を叩き出して勝利をさらった。
■H-D(ハーレー)
ハーレーのワンメイククラスも下のストリートE.T.同様、タイム申告制のクラスで、新旧、そして排気量の分け隔てなく競えるのが特徴。優勝は奥・V-RODの斎藤由晃選手でこの第3戦終了時点でポイントランキングのリーダーに躍り出た。2位となった手前、XLH883の太田直哉選手は初出場にして表彰台をゲット!
■STREET E.T.(ストリートE.T.)
左右レーンのライダーがスタート前に自身のET(エラプストタイム=0→1/4mileの区間タイム)を申告しあい、そのタイム差でスタートするストリートE.T.。両者がそのタイム通りに走ればゴール地点で同着となる仕組みで、理論的には排気量もパワーも関係なし。いかに申告通りに走り切るかの技量が問われる“ウデ”がもの言うクラスだ。第3戦ではRZを駆る小橋選手(2021年シリーズチャンピオン)が、ZX-14Rの武部文栄選手を下して優勝した。
【第3戦終了時のポイントランキングはこちらから】
第4戦は2024年10月6日(日)に開催します。
■申し込み期間:2024年9月14日(土)~9月22日(日)
申し込み時期が参りましたらトピック欄で改めてご案内します。 今しばらくお待ちください。
一般財団法人JD-STER